鳥淵神社
 「生馬の中流域、鳥淵の右岸、川が蛇行した突出部の丘陵下部に位置している。側面は急岐な岩崖地となって切れ込んでおり斜面下部に社殿がある。森林の面積は小さく急岐な凸地形でもあり、林内は比較的乾燥している」と町史には書かれているが、現在は鳥淵神社を囲うように道が整備されている。

 高木層はコジイが優先するが、コバンモチ・イヌマキ・ツゲモチ・イスノキなど渓畔の湿度を示す樹種を混生している。亜高木、低木層はコバンモチ・タイミンタチバナ・サカキ・コジイが優占し、ヤマモガシ・モチノキ・カナメモチ・アセビなどをともなう。草本層はタスミンタチバナ・コジイが目立ち、ベニシダ・センリョウ・アセビ・シシガシラなどをともなうが比較的貧弱である。しかし、組成的には町内でも珍しいコバンモチ・ツゲモチ・イスノキなどを含む貴重なシイ林である。ツゲモチはこの生馬川上流の篠原八倉神社とここの二ヶ所だけで確認され、紀南でも数ヶ所しか生育が確認されていない。コバンモチは紀南の渓流沿いの空中湿度の高い内陸地のシイ林・カシ林に生育するものである。イスノキは海岸に近い、空中湿度の高い地域のシイ林に生育するものであるが比較的生育地は少ない。

 このように紀南では生育がかぎられた樹種が混生していることはこの森林の生育環境が良好であるということを示すと共に、生馬川流域の森林が組成的にも温暖多湿な好条件に生育していることを示すものである。生馬川上流からこの付近までの地域には上記のような組成を持つ内陸の温暖執政温暖湿性タイプのシイ林が生育するものと考えられる。即ち、コバンモチ・イスノキ・ツゲモチ等を混生するコジイ−クロバイ群集である。このようなタイプの生馬川流域のシイ林成立を示す証拠となる意味で、この鳥淵神社の社叢は大変貴重な森林と言える。
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鹿供養塔

 生馬川上流の払合谷分岐点の宇津木越えの道沿いに、自然石の「鹿供養塔」があります。これは、地元の亀吉という者が獣千頭の命を奪った供養のため、寛政7年(1795)に建立されたもので、旅人の道しるべになる道標の役目も果たしていました。江戸時代の獣の供養塔は県下でも珍しく、昭和51年に町指定文化財として指定され保存されています。

鳥淵神社。最近、道路や神社の周りが整備されていた。写真の左側に鹿供養塔が少しだけ写っている。

神社の社殿。この社叢は植物学的に貴重な社叢である。

鳥淵神社の横に鹿供養塔が祀られている。

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